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ただのパンダのお引っ越し

第1章 パンダ、拾いました



ゴキリ

骨のずれる音がした。

思わず目を開いた。音の意味が理解できなくて。

急いで自分の体を見渡す。
違う、今の音は私の体からではない。

私は目の前の全裸男性に目をやった。

男の体から白と黒の毛がモサモサと伸びだした。ゴキッゴキッと音を立てて骨格が歪んでいく。手足は縮むように折れ曲がり、背が丸まり、口はせり出し、頭の上に丸い出っ張りが生じる。

「あひ…ひ…ヒェ…」

ホラー映画さながらの光景に私が腰を抜かしていると、全裸男性はフゥと息をついた。いや、そこに居るのはもはや全裸男性ではなかった。

「ぱ…ぱん…ぱん…ぱん」


パンダだった。


ウルルル、と鳴き声を上げたパンダは、嬉しそうに私の顔を見た。
そうして白黒の体を見せつけるようにクルリと1回転すると、また体をゴキゴキ言わせ始めた。

体の毛がズクズク短くなってゆき、手足は見慣れた形に変形してゆく。アッと言う間に、元の全裸男性に戻った。

「これでわかったろう?」

あっけにとられている私に、全裸男性はニコリと笑顔を向けた。

これが私と全裸男性もといパンダ男との、衝撃の出会いだった。
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