第8章 飼主失格
伊豆くんは私の両頬を手で包み、チュウと口をつけてきた。柔らかな唇の感触を追いかけて、私も口づけを返す。
ついばむようなキスから、しだいに舌を絡ませていく。
伊豆くんの舌が丁寧に私の口内を撫でつける。安心しろと言うみたいに。
私はその舌を掴まえて、強く吸いついた。
ああ、食べてしまいたい。
伊豆くんとひとつになれれば、不安なんて感じる必要はなくなるのに。
「んっ…、桃浜」
伊豆くんは口を離すと、ゆっくりと私を床に押し倒した。私も伊豆くんにしがみつき、彼の動きに合わせる。
伊豆くんが私の服を脱がせる、私も彼の服を剥ぎ取った。素肌で触れ合いたい。今、とにかくそんな気持ちなんだ。
すっかり邪魔なものを取りはらって露わになった私の肌を、伊豆くんは優しく撫で続けてくれた。
頭、頬、首、肩、胸、腰、脚。
触れられるたびに、思いが高まる。
ありったけの力を込めて伊豆くんをハグしてやると、彼はぐえっと無様な声を上げた。
「おい、何するんだ」
文句を言いながらも笑う伊豆くん。私もクスクス笑ってしまった。
「好きだよ、伊豆くん」
「桃浜は好きだと絞め殺すのか」
「伊豆くんだって、いつもパンダの姿で私を押し潰すじゃない」
ふむ、と伊豆くんは考え込む素振りを見せたが、5秒後には真顔でこう言い放った。
「だって、桃浜を押し潰すの楽しいんだ」
言うに事欠いてこの畜生。
「じゃあ私も押し潰してやるう!」
「おっ、やってみろ」
そこからはもう、上へ下へ、キャアキャアと2人して転げ回った。