第8章 飼主失格
白のロンT、黒のストレッチジーンズ、ローカットの靴下、キャンバス地のスリッポン。
次々に取り出してやると、伊豆くんはキョトンとしていた。
「なんだこれ?」
「なんだこれって、服だよ、あと靴ね」
「へえ…」
「ね、着てみて。多分サイズ問題ないと思うんだけど」
いつものジャージを脱ぎ捨てて、伊豆くんはお着替えを始めた。パンダ男だから白と黒にしたっていうわけではないけれど、いやまあ本音言うとそれもちょっぴりあるけれど、やっぱりシンプルイズベストというか、最初はこれくらい無難な方がいいと思う。
「うん、ピッタリだね。今度の日曜はこれ着て買い物に行こうね」
「何を買うんだ?」
「そりゃあ、服でしょ。あと靴も」
「え?これじゃダメなのか?」
「一着ってわけにいかないでしょ。これは服を買いに行くための服です」
「TVを見ているときも思ったが…人間はたくさん着替えをして大変だな。パンダは年中同じ格好なのにどうして可愛いと言ってもらえるんだ?」
「ペットに服を着せる人もいるよ」
「オレも、パンダの時も服を着たほうがいいか?このジャージ着れるかな?」
着れないだろうね、デブだから。