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ただのパンダのお引っ越し

第5章 エプロンは浮気の合図



寝室のドアを開けて中をうかがうと、伊豆くんはふてくされたように横たわっていた。

「もしかして、嫉妬した?」

伊豆くんは少しモゾモゾと動いたが、私の方は振り向かなかった。

「やっぱり嫉妬したんだ…。ふふっ!」

彼にそんな嫉妬深い一面があるとは知らなかった。
熊というのは執着心が強く、自分の物を横取りされると怒り狂うらしい。熊の仲間であるパンダにも、もしかしてそういう傾向があるのだろうか?

そんな彼がすっごくかわいく思えてしまって、私は思いっきり彼に抱きついた。
少し固い毛がくすぐったいけど、構わずに頬を擦り付ける。
伊豆くんは体を傾けてようやく私のことを見ると、肉球のついた大きな手で私の顔をペタペタと触った。にゅっと顔を近づけて、キスしようとしてくる。

「やだ、ケモノ臭い」

黒い鼻を指先でツンとつつくと、小さな目をギョロリとさせて私を見つめた。
目の周囲の毛のせいでパンダは垂れ目っぽく見えるけど、実際の目は少しつり上がっていて鋭い。

「はいはい、冗談だよ」

大きな口にチュウと口付けてやると、満足げに目を細めた。

「…それはそれとして、このエプロンは使うからね!1280円もしたんだから!」

私の言葉に伊豆くんは何か考え込むような素振りをしていたけれど、無視することにした。

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