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ただのパンダのお引っ越し

第5章 エプロンは浮気の合図



翌日、いつも通り仕事を終えて玄関扉を開けた。途端によい香りが漂ってくる。
なにごと?

部屋に上がると、
「おかえり」
と伊豆くんが声をかけてくれた。

私が帰宅する時はパンダの姿で出迎える約束なのに、彼は今人間の姿だ。
それだけではない、彼は、あの例の、パンダのエプロンをしていた。

「桃浜にこのエプロンを使わせるくらいなら、オレが使おうと思ったんだ。しかしこのパンダ、そんなにいいか?オレの方がいい男だろ」

「…伊豆くん、料理なんて、できたの?」
「インターネットで調べた。こういうのは、やってしまえば何とでもなるもんだよ!まあ魚焼いて汁物作っただけだがな」

伊豆くんはチャレンジングというか怖いもの知らずというか、思いつくとすぐ実践する。
ラジオで聞いた情報を信じて動物園に行こうと故郷を飛び出すくらいには、行動力がある。マネしたいとは思わないけど、凄いとなとは思う。

それにしても、帰宅したらご飯が出来ているというのが、これほど嬉しいことだったとは…。
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