第3章 ペットとセックスできますか
翌日。私とパンダ男は座布団に座り、小さなダイニングテーブルを囲んで夕食を食べていた。人間の姿のパンダ男は、豚角煮を頬張りながら「オレのことは伊豆と呼んでくれ」と言った。
「伊豆って、何それ」
「昼にやっているドラマに、その名前の男が出るんだ。格好よくて気に入っている」
「イケメンなの?」
「顔の問題じゃない。愛する女のピンチに必ず駆けつけ、問題を解決してくれるんだ。格好いいだろう?オレもあんな風になりたいもんだ」
ペットのパンダのくせに、よく言うな。
「愛する女って言うけど、キミ…伊豆くんは、フツーの人間やフツーのパンダの女の子を愛するわけ?パンダ女とかじゃなくていいの?」
「ああ。普通のパンダの女か人間の女がいれば十分発情はする」
今なんてった?
「…え〜と、発情…つまり交尾したくなる、ということかな?」
「そうだ。だが山にいる頃はそうでもなかったな、多分毎日生きるだけで精一杯だったせいだろう。まあパンダの時は人間の時ほど発情も多くないから、気にしないでくれ」
パンダの時は発情は多くない…。では、人間の時は…?
ゴクリとツバを飲み込みながら私は尋ねた。
「ああ、人間は大変だよ。女が近くにいようがいまいが、しょっちゅう興奮をしてしまう。桃浜が側にいる時なんかは発情しっぱなしだ。食事の時はなるべく食べることに集中したいんだがなあ」
なんて正直な男だ。
私は今になって自分の過ちに気づいてしまった。
パンダ男は、パンダだけど、同時に男なのだ…。