第8章 理解が困難なアイツと私
素直に頷くと、ジャンの顔が、フッと緩む。
……あ。
そんな顔も、するんだ。
柔らかく笑った顔は何回か見た事あったけど、何だろう……。
凄く、優しい顔……。
意地悪く笑わないで、いつもそんな感じで笑ってたらいいのに、この人ってなんか、損しそう。
そう思いながら、ジッとその目を見つめたいた。
するとジャンは、その視線に気付いて、目を細める。
「つっても、さすがに酒は飲めねぇけどな。」
「……え?何でお酒?」
自然と溢れた質問に、ジャンはいつもみたいにに、意地悪く笑って。
「年齢が云々っつーより、意識ある時のセックスの方が気持ちいいからに決まってんだろ。」
「?!」
絶句した私に噴き出したジャンは、上機嫌で机の上にある芋を取り、半分に分けて私に渡す。
動揺を隠す事は出来なくて、宝物のグラスに口を付けると、ひんやりとした感触が、幾分か気持ちを落ち着かせた。
……油断した。
こいつは所詮、ジャンであって。
どこでどう転がっても、正真正銘の“暴君”だ。
取り敢えず、今日こそは貞操を守らねば。
と決意して、グイッとお水を飲んで、グラスを空にした。