第9章 思わぬ誘いと憧れのヒト
あと一つ。
ジャン以外の事での、私の身に起きた最近の変化、と言えば。
ハンジ分隊長の身の回りの手伝いをする事になった事、だ。
……とは言っても、直接何か私が研究なんて出来るはずもないから、元々ハンジさんに付き添っていたモブリットさんの指示に従って、書類整理をしたり。
時には意見を言ってみたり。
ハンジさんに可愛がられている事は、なんとなく分かっていたし、私も彼女の熱心に研究する姿を、凄く尊敬していた。
……が、ハンジさんのお付き人となると、話しは違って来て、日頃のモブリットさんが、どれだけ大変だったのかが手に取るように分かる。
ハンジさんとは、調査兵団に入ってすぐに、少しだけ接触があった。
何故なら、ハンジさんに、新兵の身辺調査をした方がいいんじゃないかと持ち掛けたのが、私だったから。
自分でも整理出来ない光景を見てしまって、誰か頼れる人に縋りたかったのかも知れない。
……整理が出来ない光景。
私が見てしまったのは、トロスト区襲撃戦の時、屋根の上でライナーとベルトルト、そして……
アニが、泣いていた光景。
私はトリガーが壊れて、遠くの屋根の上から動けずにいて。
声が届きそうな距離だけど、声なんて上げたら巨人を呼び寄せてしまいそうで、それも出来なくて。
……巨人の恐怖に、その場で動けなかった。
そして、穴を塞ぐ事に成功して助け出されたのはいいけれど。
何かが引っかかって、ライナー達が凝視していた場所に戻ると……
マルコの遺体があった。
何故かそれは公になっていなくて、嫌な胸騒ぎがして……。
つい、アルミンに相談してしまって、女型の巨人捕獲班に入ったのが、今となっては、彼女との接点の始まりだったのかも知れない。