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【進撃の巨人】愛を込めて花束を(R18)

第9章 思わぬ誘いと憧れのヒト






「……げ、んじつ……なの、かな?」

「何がだよ?」

「ひっ?!」



憧れの背中を見送った、逆の方からの思わぬ声に、過剰に反応して。

ドクドクと、血液が流れる音が、全身を駆け巡る。



私は、ギギギ。という機械音がしそうなくらい、不自然な動きをして、後ろを振り返った。



声を掛けて来た主は、眉間にシワを寄せていらっしゃる、“暴君”で。



「な、な、何がっ?!」



はぁ。と、溜息を吐きながら、ジャンが私に近付く。



「どもり過ぎだっつーの。噛まれでもしたのか?」

「ッ!」



そう言って、サラリ。と私の頬を撫でる。

何も、噛まれてはいない、けど。

ジャンの暖かい体温に私は息を飲んだ。



……リヴァイ兵長が見えなくなっていて、良かった。



内心冷や汗をかきながら、ジャンを押し退く。



「だ、大丈夫!噛まれるのには慣れてるから!」

「は?んな事に慣れんなよ。つーか、マジで噛まれたのか?」

「ち、違うけど、ホント、気にしないで!」



ジャンは訝しげな顔をしていて、納得はしてないようだけど、自分の愛馬の方に歩いて行った。

……とは言っても、目と鼻の先だけど。



ホッとしながら、私はリヴァイ兵長に話し掛けられる前にやろうとしていた、馬小屋の整理を始める。



……ジャンにだけは、知られたくない。



だって、ジャンに知られてしまったら最後、また新しい弱味を提供してしまうことになるだろう。



フと、ジャンの意地悪な、悪魔の微笑みが浮かんだ。

ぶんぶんと頭を振って、それを必死に追いやる。



リヴァイ兵長が“憧れのヒト”だと知られただけでも、大惨事だったのに……

これ以上弱味を握られたら、それこそ本当に本当の下僕みたいに虐め抜かれるんじゃないか、とさえ脳裏をよぎる。



……恐ろしい。

私の頭の中に、“ジャン=悪魔”と言う方程式が出来上がっているようだ。



リヴァイ兵長のお誘いに浮かれている場合ではない。

まずは、敵……
つまり、ジャンにこの素敵なお誘いがバレないように、全力を注がねば。



妙な気合いを入れて、私は兵団服の腕を捲った。



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