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【YOI】銀盤の王と漆黒の王子【男主&勇ヴィク】

第3章 銀盤の王と漆黒の王子


四大陸終了後、勇利に電話をした純は、反省と少しの愚痴を零した後で、世界選手権の前に控えた数年に一度の大きな大会に向けての抱負を語る勇利の様子に、もう気持ちを切り替えたのだなと安心した。
「デコとの再戦前に、自分のミスに気付けて良かったやんか」
「うん、知らず知らずの内に浮かれてたみたい。まさかヴィクトルに気付かされるなんてね。この頃、随分コーチらしくなってきたし」
「…そら、流石に昨シーズンのようなトンデモコーチじゃ進歩ないやろ」
「そうなんだけど、選手も続けながら僕の事を見てくれるって、改めて凄いと思ったよ」
昨年末のヴィクトルとの約束と秘密を脳裏に反芻させながら、純は相槌を打つ。
会場である開催国の関係で、大会前長谷津に一時帰郷するという勇利が、「時間があったらでいいから、長谷津のリンクで自分の練習や演技を見て欲しい」と申し出てきたのを、純は快諾した。
「勿論、勇利の実家で壮行会と祝勝会もあんねんな?」
「祝勝会は気が早過ぎだよ~」
競技中は、ヴィクトルがコーチとして勇利の傍にいるのが実質不可能なので、臨時のサブコーチがつく事になったのだが、それが純もジュニア時代に師事を受けた人物なのを知り、暫し思い出話に花を咲かせた。
「世界の大舞台でヴィクトルと戦えるんや。勝ち負けはともかく、全力で頑張り」
「うん、絶対に勝つよ」
確信に満ちた返事に、「ホンマに強うなったな」と純は素直な気持ちを吐露する。
「僕1人じゃ無理だったよ。僕が強くなれたのは、純のお蔭でもあるんだ。有難う」
「いきなりどないしたん?」
「だって、あの時純がスケート辞めずに、僕の願いを聞いてくれたから」
勇利の優しい声と言葉に、純は思わず緩みそうになった涙腺を引き締めた。
「…礼を言うんは僕の方や。あの時僕に語った夢を、勇利はちゃんと実現してくれたなあ」
「実は僕、もう1つ叶えたい夢があるんだ」
「何?」
「今の純と、同じチームで戦う事」
「気持ちは嬉しいけど、僕に現役復帰は…」
「違うよ。ジャパンオープンなら純も参加できるでしょ?」
プロアマの混成チームが可能なジャパンオープンは、かつて競技界を湧かせたプロスケーター達の参戦も、楽しみの1つとなっているのだ。
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