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【YOI】銀盤の王と漆黒の王子【男主&勇ヴィク】

第2章 正妻と愛人の密約


「勿論、俺もそんな簡単に負けてやるつもりなんかない。残りの試合、全力で勇利と戦うから」
「きっと勇利も、それを望んどる筈や」
「本当に、勇利と出会ってから毎日が驚きの連続だったよ。熱烈なラブコールされたと思ったら塩対応だったり、幸せの絶頂からたった一夜で不幸のどん底に落とされたり。もう歳だから、心臓に悪いことは止めて欲しいんだけどなー」
「そんなにやけた顔で言われても、説得力ないで。でも、勝生勇利という男と関わるからには、避けて通れん道や。あの子は、自分の道を突き進むと同時に他人を無自覚に振り回しとる。それでも嫌いになれへんのは、惚れた弱みなんかな」
自嘲気味に呟く純に、ヴィクトルは僅かに身体を離すと笑顔を作る。
「だから、その驚かされっぱなしの勇利の事を、正妻と愛人が手を組んで驚かすって、面白くないか?」
「…違いないわ」
問いかけてきたヴィクトルに、純は右頬に笑窪を作りながら頷いた。
「デコの事やから大まかな振付や曲は作ってあるんやろ?」
「うん。でも、そこにお前の要素や振付も入って完成するものだから。日数限られてるけど、以前ジャパンナショナルで、半日で勇利のEX作ったお前ならできるだろ?」
「無茶言うてくれるな。…で、どこのリンクで練習するん?」
「そこは、お前に任せるよ。2日でいいから」
思わぬ返事に、純は一瞬真顔になる。
「アンタ、リンクの確保とかしてたん違うんか!?」
「俺、勇利のコーチやGPFその他で時間ないのに、無理に決まってるじゃないか。日本もナショナル前でメジャーな所は押さえられてるし、事を大きくして発覚しちゃったら元も子もないし」
「無計画にも程があるやろ!」
「でも、お前ならきっと何とかしてくれるって思ってたから。キョウト近辺ならコネあるんだろ?」
「…返せ、僕の感傷と涙」
改めてハグをしてきたヴィクトルに、地の底から這うような声で返すと、純は親指を彼の痛点に食い込ませた。

「純さん、ホンマ冗談抜きで堪忍して下さい!何なんですか一体!」
「無茶言うてゴメンな…バレた時は、僕も道連れやから」
「流石にそこまで物騒な事しないよ。せいぜい記憶消す位じゃない?」

過去に勇利と利用した大阪某所のリンクでは、能天気な当事者を除いた面々が、極度の疲労と緊張に苛まれ続けていた。
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