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【YOI】銀盤の王と漆黒の王子【男主&勇ヴィク】

第4章 そばにいる、そばにいて。


勇利から離れた純とヴィクトルは、タブレットを手に暫し2人で話し込んでいた。
訳が判らない勇利と、怒りが冷めやらぬといった表情のユーリを他所に、やがて打ち合わせを終えたらしき2人は、スタッフに何かを頼むと、先程の選手が曲かけ練習を終えたと同時に、半ば殴り込むようにリンクへと進み出た。
「これから、黄色い猿の面白いモン見せたるわ。…せいぜいその濁りまくった目ぇ、ひん剥いとけや」
「20世紀でもないのに、実力ないヤツに限って外見や人種持ち出して非難するんだよねえ。…俺の愛弟子を侮辱した覚悟は出来てるんだろうな?」
「ひっ」
蒼氷と漆黒の瞳に凄まれたその選手は、2人の迫力に気圧されたように後ずさる。
そんな彼を無視しながら、純とヴィクトルはリンクの中央でポーズを取った。
「気合入れろや」
「言われなくても」
そう交わした後で、リンクに『カルメン』のテーマが流れ出すと、2人は滑り始めた。
もはやフィギュアの王道どころか古典扱いの曲に乗せながら、女役の純と男役のヴィクトルは、即興とは思えぬアイスダンスを披露する。
その内に、『カルメン』の中では耳馴染みの薄い曲が流れ出すと、それまで比較的濃密に触れ合っていた2人の身体が少しだけ離れた。
同時に互いの表情や目線も変わり、刹那的で情熱的な愛から全く異なる愛へと変わったのが、傍目にも理解できる。
「これはまた随分と、マイナーな曲を…」
「僕も聴いた事はあるけど、名前が思い出せないや。何だっけ?」
「『手紙の二重唱』。ドン・ホセと、婚約者のミカエラによるものだ」
勇利の質問に答えながら、ギオルギーは氷上の2人が演じる『愛』を、真っ直ぐに見据える。
ギオルギーにつられて勇利もリンクの2人を注視していたが、不意にすぐ傍で舌打ちが聞こえた。
「お前、ホントに判ってんのか?」
「え?」
呆れた口調のユーリに気付いた勇利は、目を丸くさせる。
「ジジイとサユリは、こんな曲を即興でも普通に滑れる。そして、あいつらはお前のコーチと振付師ってこった」
「君は、とんでもない『正妻と愛人』を従えている。その男のスケートなら、期待せずにはいられないだろう」
「何か僕、物凄くハードル上げられてない…?」
「自覚しろ」
語気は違うが、ユーリとギオルギーは全く同じ言葉を口から吐き出した。
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