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【YOI】銀盤の王と漆黒の王子【男主&勇ヴィク】

第3章 銀盤の王と漆黒の王子


何とも形容し難い表情をしている純に、ヴィクトルは続けた。
「結局お前達は、同じ理由で月に向かって無駄吠えしてるだけなんだよ。いい加減不毛な真似止めたら?勇利は勇利、お前はお前なんだから」
「…」
「それと今の内に言っとくけど、俺は来季もお前に勇利のEXの振付を頼むつもりだ。勿論勇利次第だけど、きっと勇利も同じように思ってる筈だよ」
今季、純が『フィギュアスケートの原点回帰』をテーマに制作した勇利のEXプロは、幸いな事に特にコアなスケートファンから好評を貰っていた。
それ以外にもユーリをはじめ日本のJr選手のEXも手掛け、振付師1年目にしては充分実りあるシーズンを過ごす事が出来たのだ。
「…だけどね。お前には、まだ足りないものがある」
「知っとる。振付師としての経験と実績やろ」
「それもだけど、今のお前に勇利の競技プロは任せられない。理由は言わなくても判るよな?」
純は不快気に眉を顰めるも、彼の言葉を否定できずにいた。
スケーティングを魅せる事に重きを置く純のEXプロは、技の難易度を抑えめにしている。
「競技ではないのだから、スケート本来の魅力を充分に表現して欲しい」というのが一番の理由だが、それとは別に選手時代の苦い経験から、心の何処かで無意識にブレーキをかけているような自分がいたのだ。
「どんな振付師も、選手に怪我させたくて競技プロを作ったりしない。選手だって自分の実力を軽んじてるのかって不安になるよ。それともお前は、怪我をした時にその振付師の事を恨んだのかい?」
「そんな訳ないやろ。怪我をしたのは僕自身のせいやし、当時の振付師さんは、僕の為にようやってくれた」
「判ってるなら、作る前から余計な心配してないで、もっと選手の事を信じなよ。何がOKでダメかなんて、選手に実際滑って貰ってから決めればいいじゃないか」
「…!」
口元を引き結んだ純にフッと笑ったヴィクトルは、再びリンクの中央へと滑り出す。
「仮にも勇利の『愛人』なら、もっと張り合いのある事してよ」
「…面白い事言うてくれるなあ。ホンマにええんか?この先僕が『正妻』を凌いでも」
「出来るもんならね。何たって…」
「「勇利を一番魅力的に見せられるのは、この俺(僕)だから(やから)」」
そう声を揃えた後で、2人は心底愉快そうに笑った。
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