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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第103章 【番外編】嫉妬より深い


なんとなくだけど、やっぱり隣は私じゃなくてもいいのかもしれない。
そんな気持ちになった。
早く離れてあげないと……。
密かに覚悟を決めたところでぽろぽろと涙が溢れる。
これでいいんだ……。
つらいのは今だけ、きっと時間が解決してくれる。



尾行を止めて一人でホテルロビーに戻り、大きなシャンデリアをくぐって正面玄関を出ようとしたところで、ぐいっと腕を引っ張られる。
驚いたのと、不意に襲ってきたものへの警戒で慌ててばっと振り返る。
「こいつが、彼女」
と少し照れたように言われ、いまいち状況が把握出来ない。
「!!!」
見つかってるし捕まってるしバレてるしで頭がパニックだった。
「い、いつから…!?」
「……場所、教えといたらどうせ来るだろうって…」
行動すら読まれていた。
「来てくれたらどんな相手だろうが前に出しとけばとりあえず断れるだろって…」
そこまで計算されていたとは…。
「そんなかわいらしい方がいらっしゃるなら、お断りされても仕方ないですね」
女性はにこやかにそう言うと、繋心さんに笑顔を向ける。
「一日楽しかったです、ありがとうございました」
と丁寧なお辞儀をした。
そのまま正面玄関を抜けて帰っていく。
「計算より大分来るのが遅かったな、残念だ」
と独り言のように呟かれる。
「うっ……だって、信じてたから…」
と一応返事をすると、柔らかく頭を撫でられる。
「ありがとよ」
優しくそう言われると、安堵感で胸が締め付けられてからふわっと解放され、そのまま目が回ってふらふらする。
近くにあるふかふかのソファに座らされて、くくっと喉の奥で笑われる。
恥ずかしくて顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。
「あの…あの……。
断って良かったんですか…?」
「ああ、相手もそのつもりだったしな」
無造作に置いていた手に大きな手が重ねられる。
嬉しくて、胸がドキドキとして、きゅっとお腹の奥が擽ったい。
「帰ります…?」
「こうなると思って、安い部屋だけど借りといた」
「っ!?」
「帰る手段ももうないしな?」
にっと口角の上がる笑い方をされ、ますます好きという感情が加速する。
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