第108章 【番外編】独り占め
敏感になりすぎた肌に触れる少し乾燥した掌は、少しだけ痛擽ったい。
胸を優しく撫でられると、肌がたまにひっかかるのがわかる。
背中の傷はもう痛くないけれど、一つ一つを撫でられている感触が怖いほどに伝わり、小さく声が漏れた。
「悪い、痛かったか?」
「ううん」
毎日たくさん働いている、大好きな掌。
さっきまであんなに激しかったのに、今はこんなに優しく全身を撫でられて、頭がおかしくなりそう……。
お腹も腰も痛くてもう動きたくないはずなのに、甘く撫でられると身体は正直に疼く。
「外、風強いですね……」
本当に台風らしく、しっかり窓が揺れている。
今日は練習も無しになったらしい。
申し訳ない気持ちもあるけど、久し振りに独り占めの気分を味わえてすごく嬉しい。
雨風が落ち着くまでしばらく一緒にいられる。
お風呂が終わったら一緒にハンドクリームでも塗ろうかな。
お揃いの香りにして。