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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第103章 【番外編】嫉妬より深い


夜になっても帰ってこなくて、私はいよいよ座ってるのも不安になってしまった。
(夕方には帰るって言ってたのに……)
そもそも私がこんなことを思う権利なんてなくて、こんな風に思うことすら烏滸がましくて。
膝を抱えてぎゅっと背中を丸めて、なんとか気持ちを落ち着かせようと考える。
「……ダメだ……」
嫉妬心より遥かに上回る、不安。
それよりも更に頭を駆け巡る醜い自分への、嫌悪。
泣きそうになりながらどうにか解決出来ないか、なんて考えてしまってぐるぐるとしてしまう。
場所をそういえば聞いていたなとネットで検索すると、夜は映画のレイトショーなどをやっている大型の施設も入っている。
(こ、これを言い訳にすれば…いける…)

なんとか精一杯のオシャレと、精一杯大人に見える化粧をして、ヒールの高い靴を身に着けて残り数本のバスのうちの一本でその近くの町まで向かう。
確かに今まで行ったホテルとは段違いのとんでもない高級ホテルだった。
ホテルロビーから商業施設に出られる通路を探し、映画館のほうに出た。
辛うじて何本かやっているのを確認し、そのまま近くのカフェに入って人が流れていく様子をじっと伺う。 
とりあえずと急いで頼んだカフェラテは、思ったより苦くてびっくりしてしまった。

しばらくしていると見知っている脱色髪が見えた。
スーツとあまりにも不釣り合いですぐにわかる。
隣には綺麗な着物を着た可愛らしい女性がいた。
ショックとかいうより、怒りとかよりも、もしかしたらこれが正しいのかもしれない、という真実に辿り着いたような気持ちになる。
慌ててお会計をしてこっそりその姿を追う。
お店が大分閉まっているせいで隠れるところが少ない……。
なんとか堂々と歩いていかにも他人を装う。
女性が転びそうになると咄嗟に肩を支えて立ち直させる。
そういうことが出来る人なんだよね…となんだか嬉しくなる。
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