第12章 迷宮
結局るるは家を出るという決意を揺らがさず、飯を終えると片付けをして部屋に籠った。
両親が寝静まった後、彼女は早速家から出る準備をしていた。
物の少ない部屋が、更にがらんとしている。
「気が早いんじゃないの?
あと1年あるよ?」
「…っ」
珍しくるるは反抗的に俺を睨んだ。
「私は…余所者だから……。
私が徹さんの将来を邪魔してはいけない。
進路もそうだけど、…私との…」
「またそうやってイイ子ぶるの?」
「違う…」
「そうやってイイ子にしてたって、誰も褒めてくれないよ?
てか言えばいいのに。
俺に変なことサれてるって。前の親も凄かったって。
皆同情してくれるよ?いーじゃん、その方が」
「ダメ…全部、私が悪いから…」
「だから一緒に死のうと思った?」
「…っ!!」
「図星か」
肩を震わせると、るるは急いで荷物をスクールバッグに詰め込む。
怯える背中はいつも興奮する。
小さくて、守りたくて、壊したくなる。
ぎゅっと後ろから抱き締めると、またカタカタと震える。
「ねえ、俺が助けてあげたんだよ?
俺が最後まで幸せにしてあげるのに、なんで逃げんの?」
「…っ」
つまって声が出せないのがわかる。
胸が上下に動く。
服の上から膨らみに触れると、びくっと驚いたように震えた。
「や、やだ…っ」
「なんで?なにが?」
「私、わたし、またあの人たちみたいに、この家の人も…っ!!」
なるほどね…。
るるは自分に危害を与えてた大人を自分で殺したと思っている。
あれはただの事故だが、それほど彼女の願いは強かったのだろう。
後から担当の刑事に聞いたが、るるは事故の瞬間に咄嗟に自分のシートベルトを外したらしい。
どうにかして一緒に消えたかった。
残念ながら生き残ってしまった。
そしてまた、同じような目に合っている。
なんて、なんて可哀想で……
愛しいんだろう。