第12章 迷宮
ぎゅっと更に抱き締めると、呼吸が荒くなる。
肺がひゅーと高い音を鳴らしている。
俺を怖がっている。
というより、周りの人間全てが怖いんだろう。
「出ていって、どうすんの?
未成年じゃ家も借りれないよ?
お前、友達もいないだろ?」
「そのまま、死ねるならそうする……」
消え入りそうな声がかすかに耳を震わせる。
「それは俺が許さない。
何回でも出て、遠ざけるといい。
俺は何度でも、君を見つけて連れ戻す」
るるはいつの間にか持ってきていたローファーを履くと、こちらも見ずにベランダから外に出た。
それはまるで、脱走するカナリアのようだった。
「またね、見つけるから…」
だってそうでしょ?
君の居場所はここしかない。
いつだって迷宮の道はここに戻ってくる。
例えるるが望んでいなくても。
その時は、そう思っていた。