第2章 始動
「今回の事件–––東京都連続変死体事件は、私が以前所属していた捜査一課の担当でした」
事前にパワーポイントを準備していたようで、
後呂が事件の写真をテレビの液晶画面に映した。
「この事件の始まりは、東京都大田区で起きた大田区OL殺傷事件です。被害者は32歳で会社勤務の戸根川美香さん。 害者は会社帰りに同僚の女性と会社近くのレストランで食事をとった後、家近くのトンネルの中で殺害されているのを 通りかかった近所の住人が発見しました」
「それで遺体の状況は、どうだったんだ?」
角田がボールペンを走らせながら丸山に尋ねた。
その言葉に応えるように後呂が次のスライドへと切り替えた。
液晶画面に映ったのは害者と思われる女性がトンネルの壁に背を預け血を大量に流し死んでいる姿だった。
女性の遺体近くのアスファルトの地面や壁は至る所に血が飛び散っており、この事件の悲惨さを物語っている。
「この写真の通り、かなりの出血で死因も出血多量による失血死。身体中に噛みちぎられた跡がいくつも残っていたわ。とても人間とは思えない歯型の跡がね」
丸山のその意味有りげな一言で知念は何かを勘付いた。
「成る程。だから僕達の出番ということですか」
もしもこの事件が異世界生物がらみなら、この部署にうってつけの捜査である。
「that's rightだ」
池辺は指を鳴らしてそのピカリと光る白い歯を見せた。
「殺害場所のトンネルは害者が通勤で毎日利用しており、殺害された当日の帰りもこのトンネルを使ったと思われます。トンネル近くには防犯カメラが無く、そのうえ夜遅くの犯行だったため目撃者もいませんでした」
「犯人の運が良いのか、はたまた其処まで読んでの犯行か。犯人に繋がる情報が少な過ぎるな」
角田が持っているペンをこめかみにあてた。
「東京都"連続"変死事件っていうくらいだから、同じような手口の事件が他にあるってことですか?」
服部が足をプラプラと遊ばせて丸山に尋ねた。
「そうよ。それを今から説明するわ」