第2章 始動
––––––その日の夜
部下達を全員帰宅させた後、自身のデスク以外の明かりが消えたオフィスで一人、池辺輝彦はパソコンに向かっていた。
HLにいる"ある人物"へ送るメールをうっているのだ。
「今回君にメールを送ったのは、私から君に頼みがあるからだ。
突然の話だが、明後日に私の部下が、先日君に報告した事件の調査でHLに行くことになった。
その調査で君達にも協力を仰ぐことになるだろうが、その件については追って連絡をする。
それにあたって、調査が終わるまでの間、君の家に部下達を住まわせてほしい。
君の家が異様に広いのはアイツから聞いて知っている。
だが君の性格からして、この頼みを断るのは僕も予想できてるから、もう君の家宛に部下達が仕事で使う荷物を送っておいた。
明後日には君の家に届いているだろう。
追伸
そっちに行く部下二人のうち一人は私の弟子で、もう一人は君も知っている男の息子だ。
なかなか癖のある二人だが、良くしてやってくれ。
いつか君に直接会えることを楽しみにしている。」
勢いで書いた文面を何回か読み直し、満足すると送信ボタンをクリックした。
そしてパソコンの電源とデスクライトを切ると、池辺は革の鞄を手に持って真っ暗なオフィスを後にした。