第2章 始動
丸山が後呂に次のスライドにするように促す。
住宅街内のゴミ置場にスーツ姿の男性が
ゴミ袋の山に顔を埋め、うつ伏せに倒れている写真が多様なアングルで映し出された。
白や透明のゴミ袋が血の赤で染まり、
コンクリートの地面にまでその男性のモノと思われる血が滴り落ちている。
「大田区の事件から一週間後、世田谷区内の住宅街のゴミ置場で43歳 会社員の住吉賢治さんが殺害されているのが発見されました。死因は出血多量による失血死で、害者の身体中に人外のモノと思われる噛み跡があることから大田区の事件と同一犯と思われます」
「今回は目撃者はいるのか?」
角田の問いに
丸山は視線を手元の書類に向けたまま答えた。
「20時ほどに誰かの叫び声を聞いたって言う住人が何人かいたわ。それに、これは私達にとっては重要な目撃情報だけど殺害現場近くの住宅に住む小学生の男の子が二階の自分の部屋から犯人らしき人物を見たと証言しているの」
「確かに捜査一課の奴らは子供の話なんて話半分にしか聞かないだろうな。で、その内容は?」
「えぇ。その男の子の話だと、20時過ぎに他住人の証言と同じく叫び声を聞いて、現場が見える窓から外を覗いた時に標識くらいの高さの怪しい影を見たみたい。イメージは仮面○イダーの悪役怪物らしいけど私には良く分からないわ。」
丸山と後呂も「仮面○イダー」は今までの人生の中で数回見たことがある程度のため、詳しい知識は持ち合わせていないのだ。
一方男性陣はというと、
「あぁー、なるほどな。なんとなく分かった」
「僕も理解しました」とその犯人のイメージは掴めたようだ。
この通り、たとえ女性であっても
日本人なら最低でも「仮面○イダー」という題名は知っている。
だがここに一人、それすらも知らない人物がいた。
「ん?仮面○イダーって何ですか?」
その服部の言葉に角田は驚嘆と呆れた表情を見せた。
「おい服部。お前、あの国民的特撮ドラマをしらねぇのか?」
「角田さん。こいつに僕らの常識は通用しませんよ。
諦めて下さい」
何をそんなに驚く必要があるのか服部には全く分からなかった。
その後も仮面○イダーについて誰も服部に説明をしようとしないので、服部は周りに気づかれないように、さりげなくポケットから自身のスマートフォンを取り出した。