第2章 始動
その少し悪意のこもった目線に気づいたのか、丸山は「なに?」と左隣にいるその男に言い、睨んだ。
瞬間、男は体をびくりとさせた。
どうやら丸山の方が一枚上手だったようだ。
その男は、右隣を横目で気にしながら一回深呼吸をした。
「警視庁組織犯罪対策係から配属された、角田剛(かくた ごう)です。仕事をしていく内に俺のことは分かると思います。 、、、よろしくお願いします」
サスペンスドラマで良く見るような、屈強で渋い顔の男性警察官のような見た目だが、心の内までドラマの男性警察官であるかは分からない。
だが1つ言えることは、あまり喋ることは得意ではない、ということぐらいだ。
次にその角田の左隣にいる、ステンレス製の眼鏡をかけた、いかにもインテリという雰囲気の若い男性警察官に他の警察官は目を向けた。
「警視庁サイバー犯罪対策課から配属されました、知念秀作(ちねん しゅうさく)です。運動は得意ではありませんが、情報端末の扱いには自信があります。経験はまだ浅いですが、足を引っ張らないように務めていきたいと思います。よろしくお願いします」
話し方も見た目通りで、いかにも友達は少なそうだ。
いや、眼鏡をかけている人が全員そうだ、というわけでは断じて無い。
この知念秀作という男に限っての話だ。
いよいよ最後の人物に自己紹介の順番が回ってきた。
多くの人はお気づきだろうが、ラストはあの『機捜隊の問題児』だ。
喋るのが最後で、ずっと人の話を聞くばかりだったので
問題児のその鋭い目は眠さで閉じかかっていた。
せめて耳は稼働していればいいのだが。
その問題児の様子を見て、異変にいち早く気づいた池辺が「服部巡査、自己紹介をよろしく」と少し声のボリュームを上げて声をかけた。
その声の大きさで気づいたのか、機捜隊の問題児―――服部真は瞬間的に目を最大限に開き、背筋をピンと伸ばして直立態勢となった。
だが背筋をピンと伸ばしたところで低身長が高身長になるわけでは無いのだが、それは言わないでおこう。
そして直立態勢を早々に崩しまだ少し気だるそうな声で話し出した。