第4章 課外授業【マカ・ソウル編】
「ねぇ、先生」
「何?」
「……"魂"って作れるの?」
「そうねー……体は造れるかもしれないけど、魂は神様じゃないと無理かな」
「体は可能なんだ?」
「人間そのものは難しいけど、近いモノなら可能よ」
好奇心から質問しているのだとアリサは思った。こんな幼い少女が科学に興味を抱いてくれた事が何より嬉しい。……だが、少女はそうでなかった。
「……じゃあ、造ってよ」
「え?」
「"魂"を入れる器。先生なら作れるんでしょ? この本にも、そういうニュアンスの事書いてあったよ」
少女の目に先程までの輝きは無かった。あるのは欲に駆られ、歪み濁った眼差し。
大切に握りしめていた本を広げ、ニタァ……と不気味に彼女は笑った。真っ黒の闇に自分も落ちてしまう、アリサは直感でそう感じた。
「それは、あくまで理論上の話。私は造れないし、造らない。神への冒涜に値するから」
「もう少し話がわかる人だと思ったのに……。造らざるを得ない状況になれば、造ってくれるよね?」
「一体、何を!?」
突然、スイナは近くにいた男性研究員目掛け駆け出し、そのまま胸の辺りに手を突っ込んだ。
研究員の顔は一瞬にして青ざめ、「ヒュー……ヒュー……」と苦しそうに息をしている。空気も体も一気に硬直し、その場にいるスイナ以外の人間は誰一人として声を上げることも、動くことすら出来ない。室内に広がる緊張感に支配された空気。