第1章 一人ぼっちの職人と新たな武器
「……俺も暗殺術は得意なんだよ!」
「っ!?」
拘束されていた身を捻り、体の自由を手に入れた少年は至近距離で弾丸を放った。幸い、掠めたのは時雨の逃げ遅れた髪の毛だけだった。
「危ないじゃない!!」
「は? 戦いに危ないもへったくれも無いだろ!」
「そもそも何で攻撃してくるの? 戦う理由は?」
「そんなの」
少年が何かを言い終える前に、「コラッ!! 貴様ら、何してる!!」と廊下の端から走ってくる人影が見えた。その姿が近付くにつれ、時雨の顔が引きつっていく。
「ゲッ……死人(シド)先生……」
弾が頭を貫通している。青ざめた顔(ゾンビのため)が怒りで仄かに赤く染まっていた。
「……次は、アンタか? ニシシ♪」
一瞬で少年は死人の前に立った。
「俺の弾で撃ち抜いてやんよ」
「ゾンビに銃は効かん!! 貴様もゾンビになって、出直して来い!!」
少年が弾を撃つ前に、死人がエルボーを決め、そこから床に叩きつけた。
── ズガンッ!!!
鈍い音と共に、少年の顔面は床にめり込んだ。
「あ~ぁ……」
「……まったく、相変わらずだな。火ノ丸」
「死人先生、彼と知り合いなんですか?」
「あぁ、まーな……」
言葉を濁した死人の目に悲しみの色が浮かんでいた。火ノ丸という名の少年との間で、過去に"何か"あったのだと時雨は瞬時に察した。