第4章 課外授業【マカ・ソウル編】
そんなある日。ソウルに武器としての能力が目覚める。
「スゲーな、その腕。本物の鎌みたいだ」
「だろ? COOLな俺にピッタリだ」
腕を刃に変え、満足げにソウルは笑う。
「……本当に行くのか? エヴァンス、お前にはピアノの才能が」
「やめてくれよ、兄貴。名前もソウルに変えたんだ。……もう行くって決めたから」
才能があったなら続けている。けれど、自分にその力はない。半ば、音楽の名家からの逃亡。才能のある兄からソウルは離れたかった。
「思い出したか? お前の心の隅に"兄貴さえ居なければ"って淀んだ気持ちが渦を巻いてた。そこに狂気が溶け合い、俺が生まれたんだ」
「違う……俺はっ……!!」
ソウルは自分の足に視線を落とした。次に続く言葉が出てこない。兄は誇りであり、憧れだ。それなのに、彼の中にある黒い影がそれを否定する。
「本当は……兄が居なければ、自分の力でも評価されたのに。兄が居なければ、みんな自分に注目してくれたのに。……だから、兄がキライだ。大キライだ!!」
「違う……俺は、兄貴を嫌ってない!!!!」
ソウルが顔を上げると、いつの間にかソウルの膝丈程だった小鬼が自分を見下ろすまで大きくなっていた。