第1章 一人ぼっちの職人と新たな武器
「あ、いた!」
「……よっ」
「"よっ"じゃないよ! ま、アンタが居なくても……って、どうしたの!?」
「ん?」
「汗、ビッショリだよ?」
オレンジ色のTシャツが汗を吸って、尋常じゃないほど濃くなっている。外気温は過ごしやすいくらいだ。暑さで汗をかいたとは考えられない。火ノ丸も誰かと闘ったり、過度な運動でもしたのだろうか……。
「あー……ちとな」
「来る途中に小川があったから、そこ行こう」
サラサラと流れる澄んだ水。時雨は足を浸し、全速力で走った疲れを癒した。火ノ丸は、少し上流で、水浴びをしている。
「ぷはーッ!! 生き返るー!!」
ジャバジャバ水しぶきを上げ、はしゃぐ火ノ丸。
「まったく、ガキなんだから……」
呆れつつも、久々にパートナーがいる感覚に楽しさや嬉しさが溢れ、自然と口角が上がる。
独りより、側に誰かがいてくれた方が何倍も楽しく過ごせる。そう思わせてくれた彼となら…………
「あ、あのさ……私と……って、あれ? いない!!」
小さく見えていた彼の姿は何処にもない。
バシャッ!!と、水面から足を出し、彼がいた方へ走る。