第1章 一人ぼっちの職人と新たな武器
その頃。逆方向へ行った火ノ丸は、冷や汗を流しながら、息を殺し、茂みに身を潜めていた。
「(……な、何なんだ……コイツ……)」
── 遡(さかのぼ)る事、10分前。
陽気に鼻歌混じりで歩いていた火ノ丸。
「一人はいいよなー、やっぱ! 最強の俺様にパートナーなんて、必要ねー! 俺様最高ー! ニシシシ♪」
と、その時。微かに感じた異様な空気。重たくて暗くて……
「"ち、力が……欲しい……"うわ!? 何言ってんだよ、俺!!」
頭をブンブン振り、ねっとりと まとわりついてくる気を払う。しかし、どれだけ抵抗しても、それからは逃れられない。まるで、地面から生えた無数の手に、自分の体を掴まれ、雁字搦(がんじがら)めに巻き付かれているような感じだ。
「く……っそ……何だよ……これ……ッ」
全身が呑み込まれていく、とてつもなく深い闇に……。
"ここで意識を手離せば、二度と戻って来られない"
そう訴えかけてくる直感。火ノ丸の脳裏を幼い頃の記憶が巡る。祖母が、よく口にしていた。"辛いとき、口ずさみなさい"と。
「"太陽は、どんな状況でも光を失わない。太陽こそ、正義の象徴"」
この言葉を言うと、何だか光に包まれたように、ポカポカと体が温かくなってくる。負のオーラも、気にならなくなった。