第6章 課外授業【夢主編】
「誰か来る。……事情があるんだろ? 早く行け」
「見回り兵だ! ……ありがとう。明日の夜、またここに来て。絶対だよ!」
少年は再び闇に身を投じた。彼が去るのを見届けたところで、火ノ丸の背中に「そこで何をしている!」と声が届いた。見れば、警官のような制服に身を包んだ男が三人立っている。
まだ彼らとの距離は遠い。火ノ丸の足元の雪に少年が居た痕跡が残っている。もし彼らが少年を探し、巡回しているのだとしたら……。
近づく足音に耳を澄ませる。火ノ丸はタイミングを計り、挙動不審に辺りを見回すと、「うわっ!?」と声を上げ、わざとらしく前に転んだ。雪の上に残った少年の足跡は跡形も無く消え去り、代わりに火ノ丸が着ているコートの跡が雪面に記憶された。