第6章 課外授業【夢主編】
「……お兄さん、何してるの?」
建物と建物の僅かな隙間から、突然 少年の声が飛んできた。そこは街灯の明かりが届かず、深い暗闇がどこまでも続いているように見えた。
普段ならば、微かな人の気配も察知する火ノ丸だが、憎しみの感情に我を失っていたようだ。
「……散歩」
「こんな夜に? ……お兄さん。見かけない顔だけど、どこから来たの?」
昼間、死武専生だとルルーノに明かし、時雨に叱られた。それを思い出し、火ノ丸は「ルルーノさんの家から来た」とだけ、少年に伝えた。
「え!? オバサンの家から!?」
少年は闇から出て、火ノ丸の前に立った。歳は、九歳ほどに見える。着ている少し大きめの山吹色のコートのボタンは全部閉じられ、紺色の半ズボンから覗く白い肌は、寒さで赤く染まっていた。足元はレインブーツを履いている。中性的な顔立ちで、シルクのような滑らかなブロンドの髪が波を描き、両頬にあるソバカスがチャーミングな少年だ。