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淀んだ世界で【SOUL EATER/※R15※】

第6章 課外授業【夢主編】



 子供は素直で純粋だ。気になった事や分からない事があれば、身近にいる大人に訊ねる。火ノ丸もまた、この疑問を父に話した。

 その翌日、教育係が眼鏡をかけた狐目の中年男性に代わった。見るからに厳しそうな人で、火ノ丸の予想よりもスパルタであった。

 彼女のことを訊ねると、彼は顔色ひとつ変えず、幼い火ノ丸に告げた。

「彼女の心は悪に堕ち、今朝早く処刑されました」

 火ノ丸の中で、黒い何かが渦を巻いた。幼い彼には、理解出来得ぬほど複雑な感情ではあったが、自分のせいでという罪悪の念が強く彼を締め付けた。

"本当は、正義なんて無いのかもね"

 成長した今となっても、彼女の言葉を火ノ丸は忘れることが出来ずにいる。キュリスの街に降り続ける白い雪を見上げ、彼は ゆっくりと瞼を閉じた。彼女が亡くなったと聞いた あの日も、窓の外では儚げに雪が舞っていた。

 一体、どれだけの人が "正義" という名の犠牲になったのだろう。父や祖母、【太陽族】は どれだけの人を手にかけたのだろう。

 火ノ丸の目が憎しみで揺らぐ。握りしめた拳、噛み締めた唇。自分にも、彼らと同じ血が流れている。胸の刻印が その証だ。

 降り積もる雪に背負った十字架は重みを増す。久方ぶりに見た雪は、火ノ丸の心の傷を拡げていったのだった。

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