第6章 課外授業【夢主編】
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雪明かりの中を闇に紛れながら、火ノ丸は進んでいた。彼にとって、二階にある部屋から抜け出すことなど朝飯前なのである。と言うのも、祖母と二人だけの生活になってから、毎日のように密室の部屋から抜け出る訓練を行っていた。
「私たちは、【恨まれ人】だ。いつ復讐に誰が来てもおかしくない。……だが、お前に罪はない。ただ生まれた場所に恵まれなかっただけだ」
これが祖母の口癖であった。幼い火ノ丸が数多の刺客たちから生き延びるための術として、彼女が持つ暗殺の知識を全て彼に託した。
火ノ丸の一族は "正義"を掲げ、悪の取締を行っていた。言わば、警官のようなものである。だが、彼らが描く正義と少しでもズレた考えや行動を取った者にはキツイ罰を与え、時に その場で首をはねる事もあった。
幼い頃の記憶は曖昧だが、忘れられない記憶もある。火ノ丸の教育係をしていた若い女性が、ある日。彼に こう言った。
「"正義"はね、見方次第で "悪"にもなるの。……本当は、"正義"なんて無いのかもね」