第6章 課外授業【夢主編】
風が無いとは言え、氷点下の外気温は薄着の時雨と火ノ丸に容赦なく突き刺さる。駐車場から店舗までの僅かな距離ですら、歩くのがやっとだ。手はかじかみ、感覚が麻痺していた。
店内に入ると、南国へ訪れたかのような温かさが二人を包み、冷えた体を癒してくれた。
「おかえり、遅かったね。……ん? この子たちは?」
「雪道を こんな薄着で歩いてたから、連れてきたんだ。しばらく、家に泊めるからね」
「……まさか……心中じゃないだろうね?」
「ハッハッハ!! やだよ、アンタったら! アタシと同じ事言ってる」
店の奥から出てきた七三分けで鼻の下にヒゲを生やした細身の中年男性とルルーノは親しげに話していた。
「紹介するね。この人は、キード。アタシの旦那さ」
「はじめまして。よろしく、二人共。ぜひ、ゆっくりしていっておくれ。ルルーノの手料理は絶品だよ」
キードは二人に笑顔を向けた。彼もまた ルルーノ同様、気さくな人物のようだ。
「ありがとうございます! 私は、時雨です。彼は、火ノ丸。今日から、お世話になります。よろしくお願いします」
「よろしくな! チョビ髭のオッサン!」
「ちょっと、キードさんに失礼でしょ!!」
「火ノ丸くんは面白いな! いいよ。好きに呼んでおくれ」
キードは 二人に「荷物を置いたら、コートを見繕ってあげるから、早く置いておいで」と促した。