第6章 課外授業【夢主編】
「……え?」
後部座席に座る二人の声が重なった。【本物】を暫く見ていないとは、どういう事だろう。太陽も月も、天気が悪い日が続いたとしても、いつかは必ず顔を出すはずだ。
「もしかして、【季節を忘れた】って……」
時雨の問い掛けに、ルルーノは「何の話だい?」と惚けた。
「やだねー、ただの独り言さ。気にしないでおくれ。ほら、しっかり座ってるんだよ。曲がるからね」
信号は太陽へと変わり、車は右へ曲がっていく。時雨と火ノ丸は顔を見合わせ、「何かある」と目で会話した。
メインストリートから外れた途端、あれだけ激しかった車通りが ぱたりと途絶えた。住民の姿も見当たらない。平坦な道を走りながら、バックミラー越しに映る二人を見つめ、ルルーノは話し始めた。
「……この街には、絶対に触れちゃいけない事があるんだ」
「さっき、時雨が言おうとした事か?」
火ノ丸の問いに、ルルーノは黙って頷いた。そして、二人に「深入りしない事だよ、いいね?」と念入りに釘を刺した。
雪で覆われた街は、秘密も積み重なっているようだ。
「……けど、アンタたち。"死武専"から来たんだったよね?」
「はい」
ルルーノは少し考えたあと、「……まさか、ね」と悲しく笑った。