第6章 課外授業【夢主編】
「あらヤダ、あの子達……。おーいッ!!」
凍えながら歩いている時雨と火ノ丸のすぐ側の道を一台の赤い車が 二人に合わせ、ゆっくりと並走を始めた。見るからに温かそうなベージュ色のダウンジャケットを着た 四十代のご婦人が 二人に話し掛けた。
「そんな薄着で居たら、凍死しちまうよ! さぁさ、乗って! 私も買い出しから街に帰るところだから」
見ると、助手席に幾つものビニール袋があり、野菜などが顔を出していた。
冗談混じりで「凍死」を口にしていた火ノ丸の顔が青ざめる。本当に凍死してしまっては笑い話にならない。
「是非、乗せてください!!」
大きく一礼すると、後部座席のドアを開け、火ノ丸は乗り込もうとしたのだが、彼の服を引っ張り、時雨はそれを阻止した。
「ちょっと、何乗り込もうとしてんの!!」
「いいのよ。ほら、早く!! 二人とも乗って」
「いいって言ってんだ。乗るぞ! 凍死なんかしてたまるか!」
ポイッと火ノ丸は時雨を車内に投げ入れ、自分も そそくさと乗り込んだ。車内は暖房が効いていて、冷えきっていた体にじんわりと暖かさが染み渡っていく。
「ふー、生き返ったぜ!」
「乗せてくださり、ありがとうございます」
「いいのよ、お礼なんて。私は、ルルーノ。二人は?」
「俺は、火ノ丸! 頼りになる男だ!!」
「……自分で言うことじゃないでしょ。……私は、時雨です」