第6章 課外授業【夢主編】
無数の冷たい結晶が空から、ほろほろと地を目指し、ゆっくり降りてくる。その速度があまりに遅いからなのか、数が多すぎてなのか、一瞬だけ世界が止まったように映る。
雪の不思議は、それだけではない。暗い雲から降るのは同じなのに、雨の日よりも外が明るい。降り積もった白が僅かな光を反射するからだろうか……。
時雨は、雨より雪が好きだった。火ノ丸は、どちらも好きではない。しかし、時雨は雪も嫌いになりかけていた。
「……さ、寒い……」
「と……凍死しちまう……」
寒さで唇は真っ青。ガタガタと体を震わせながら、地を覆う雪を蹴りあげ、街へ向かって歩いていく。
二人が訪れたのは、"キュリス"という街。【季節を忘れた街】とも呼ばれている。
「何で、【季節を忘れた】なんて言われてんだろうな」
「さぁ? とりあえず、街に出て聞いてみよ」
「あぁ、そうだな。にしても………寒ぃぃぃぃ!!」
鼻水をすする音と、ザクッザクッと銀世界を進んでいく足音のみが辺りに響く。動きを無くした絵画の中に迷い込んでしまったかのような静寂ぶりだ。