第1章 一人ぼっちの職人と新たな武器
『"見た目に騙される、人間の悪いところ。こう見えて、手はタングステン製なのです。タングステンは、熱に強く、ダイヤモンドの次に固い。ただ、少し他の金属よりは重いですが……"』
口を開いたと思えば、これまたよく喋る人形だ。背は時雨の腰ほどしか無いが、先ほどのパンチが攻撃力の高さを物語っている。
『"……あなたとは、ここでサヨナラです"』
トタトタと駆け寄ってくる人形。……こんなの相手に負けたら、死武専のいい笑い者だ。火ノ丸にも確実に笑われる……。
時雨は唇から流れる血を拭い、不敵な笑みを浮かべた。
「悪いけど、人形には負けない」
隠していた手裏剣を人形の顔めがけ投げ、撹乱(かくらん)しようとしたのだが、人形は避けることなく、手裏剣を顔面に突き刺したまま、走り続けている。
その姿に、時雨の胸が痛んだ。
「人形にだって、"命"はあるはずなのに……」
誰かに作られ、この世に彼は生まれた。生まれたことによって、命も一緒に生まれたはずだ。作った人の魂の欠片をそこに宿して。
『"サヨナラ……サヨナラ……"』