第5章 課外授業【ブラック☆スター・椿編】
スラッとした体型に腰下まである漆黒の髪。顔は窶(やつ)れ、頬が痩けている。そのせいか、十代後半の実年齢より、老けて見える。群青色の良質な着物に草履姿。左脇腹に差してある鞘は刀が抜かれている。ギラリ月光に鋭く光る、赤い鮮血を滴らせた刀。
「…… "鬼神"が、お前の目指す道か?」
「あぁ、そうだ。……鬼神となれば、この世に怖いものは無くなる。さすれば、あんな小娘にビクビクする必要も無い!!」
「それって……テメェが弱いだけじゃねぇかッ!! 鬼神になんかならなくたって、最強への道はいくらだってあるだろ!! ……俺は死んでも、"鬼"の道は御免だね」
「ブラック☆スター。貴様には分かるまい。お前には、"才"がある。才ある者の努力は必ず報われる。だが、才のない者は努力だけじゃ、越えられない壁というのが」
若竹の話を聞きつつ、ブラック☆スターは右手の小指で右耳の穴を掃除していた。
「悪ぃな。俺、聞いても分かりそうにねぇや。……ただ分かったのは、"才"のせいにして、お前が自分自身の弱さに負けたって事くらいだ」
身構えるブラック☆スターに、若竹も刀を構え、戦闘態勢に入った。
「俺は貴様が大嫌いだった。これは、いい機会だ。どれほど力をつけたのか、貴様で試してみよう。そして、死武専の奴らに思い知らせてやる。"ブラック☆スターでも太刀打ち出来ない相手"とな!」
「おいおい!! 俺様は、そんなに雑魚キャラじゃねぇぞッ!!!! ……お前は、俺が此処で仕留める」