第5章 課外授業【ブラック☆スター・椿編】
椿は長を見据え、話し始めた。
「ブラック☆スターは、一度も逃げなかった。どんなに辛くあたられても、自分の覚悟は決して曲げない。星族の生き残りとして、全てを背負って彼は生きている。……死を覚悟した、今だって。……村長さん、あなたに この覚悟は出来ますか?」
「………」
彼は下唇をギュッと噛み締めた。人は辛い事を忘れようとする生き物だ。それと向き合える人は、なかなか居ない。もがき苦しみ続けるより、その事を忘れてしまった方が楽になれるから。
だが、ブラック☆スターには消せない証が体に刻まれている。生きている間は必ず付きまとう。ならば、ずっとそれと向き合うしかない。全てを、一族の生き残りとして、背負う他に無いのだ。
悲しいが、これを《運命(さだめ)》と言うのかもしれない。
「自身の命を持って償う。彼なら、"死"ではなく生きて償うはずです! ……お願いします! 彼を、ブラック☆スターを殺さないでください!!」
「………少しだけ、時間をください」
そう言うと、宿に椿を預け、自分の家へと長は帰って行った。寂しげな背中に夕闇が昼の終わりを告げる。
外は すっかり闇に包まれ、街灯の少ない村の真上には細々と輝く星たちが川を作り、キラキラと流れゆく。
そんな星空に椿は何時ぞやの出来事を思い返していた。