第5章 課外授業【ブラック☆スター・椿編】
僅かだった手が何度も宙を掴む。鉄格子を力いっぱい握りしめ、彼の名を椿は叫んだ。
「椿ッ!! お前は何としてでも生き残れ!! ……色々ありがとな! 楽しかったぜ!! みんなによろしくな!!」
もはや姿は見えない。声だけしか聞こえないほど遠い。彼の言葉に"最期"が過ぎる。
【一族のけじめ】なのかもしれないが、彼自身が犯した罪ではない。それを背負って命を絶って、何が残るというのだろう。
「復讐は負の連鎖しか生まない。……あなた達が彼の命を奪うなら、私は この村を奪う」
「……あなたには分からないだろう。愛する者を、同志を、無惨に殺された者の悲しみと憎しみと怒りが。私は妻を亡くした。息子も娘も。産まれたばかりの孫までも。アイツを殺したところで何も変わらないのは分かっている。愛した者たちが帰ってくる訳でもない。……それでも私は、アイツを殺さないと気が済まないんだ!!」
「……傷つけられたら、傷つけ返していいの? この世に奪っていい命なんてある訳ない!! ブラック☆スターは、全てを背負って生きている。でも、あなたは悲しみから逃げているだけ!!」