第3章 砂漠の月151~172【完】
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片付けとおせちの準備も終えた頃になんとか三家の両親兄弟が全員集まり、改めて新年の挨拶を交わすと市と元就、晴久と月子は揃って初詣に出かけることにした。
着替えは洋服しか持っていなかった月子に毛利の母が着物を用意してきたと言えば、市がそれを受け取って月子を自室に連れ込み嬉々として着付けた。
市も自分で着物を着終えると和装でも合うバッグを手に皆が集まっているリビングへと戻る。
「お待たせ」
「お待たせしました」
市と月子が顔を覗かせると、信長を始めとした男親たちが一様に華やいだのは仕方がないかもしれない。
それにイラつきを見せる元就に市が苦笑しながら手を引くと、月子の隣には晴久が来て出かけようとするがその前にと引留められてそれぞれお年玉を渡される。
照れながらも素直に受け取ると、気を付けて行って来いと見送られて四人で家を出た。
「初詣ちょっと遠出する?」
「其方らに任せる」
「晴久さんも?」
「おう。月子と市が行きたいとこで良いぜ」
家からのんびりと駅に向かって歩きながら、行先を相談すれば男性陣は特に希望はないらしく市と月子が携帯片手に検索して行先を決める。
最終的には屋台が出ているらしいが穴場だと書かれていたお寺へと初詣に行くことにして、そちらの方向の電車に乗る。
電車の中では四人でのダブルデートは久しぶりだと市と月子が嬉しそうに話し、笑顔の二人を見て微笑んでいる元就と晴久が居た。
当然のように注目されるが、視線をさらっと無視した四人は目的の駅に辿り着くと下車する。市と月子が手を繋ぎ、その後ろを歩いている元就と晴久は女性陣に声を掛けようとする男たちを視線だけで牽制して歩く。
その様子に元就と晴久に声を掛けようとしていた女性たちもさすがに察して、四人は特に絡まれることもなくすんなりとお寺に到着した。
「ここって一昔前のドラマの登場人物で有名なんだって」
「そうなんですか?」
「うん、でも祭ってある神様は健康とかの神様だよ」
「お父さんたちの健康もお願いして、お守り買って行きたいです」
「じゃあ、加太守と除疫守買って行こうか」
「はい!」