第3章 砂漠の月151~172【完】
「わ、たっ! 私でッ、ほんとにっ!」
「月子が良い。月子以外にはいらない」
「私、もっ! 晴久さんがいいっ! 晴久さんが許す限り、ずっと、ずっと傍に居たいぃ!」
必死に嗚咽を堪えて応えた月子が堪えきれず本格的に泣き出しながら両手を伸ばすと、立ち上がりながらそれを受け止めた晴久が抱きしめる。
胸元に顔を押しつけて泣くのをそのままに、月子が落ち着くまでずっと背や頭を撫で続けた。泣き止む頃、頬に手を添えて顔を上げさせると覗き込んだ晴久は愛しげに微笑んで涙を拭う。
「あーあ、目が腫れちまったな」
「うぅ……」
「どんなんでも可愛いけど、流石にちょっとどっか寄ってくのは無理か」
「どっかって?」
「食事に行くかって思ったんだけどな。まぁ、いっか。家寄ってけよ、今日は俺が飯作るから」
「……うん。でも、一緒に作りたい」
「月子がそうしたいなら、俺も嬉しいしな」
「うん……。晴久さん、ありがとう。大好き」
「俺こそサンキューな。愛してる」
泣き腫らした顔の月子に苦笑しながら、晴久は一度抱きしめた身体を離して散水用の水道でハンカチを濡らすと戻ってきて腫れた目元を冷やしながら言う。
晴久の言葉に素直にこくりと頷いた月子に誓うようにキスをすると、ある程度冷やしてから手を引いて歩き出す。
帰り道、理事長許可は出ているから明日から指輪は外すなよと言われてきょとんとした月子が、心配性だと笑うのを横目に早く来年の今日にならないかなと零す。
高校卒業後、なんやかやと市と月子が始めた趣味の物作りが軌道に乗ったり色々あるが、今日の約束はしっかりと守られて二人がずっと一緒に居るのはまた別のお話。