第3章 砂漠の月151~172【完】
月子は荷物を置くとさっそく手伝いに混じる。
何を手伝おうかと問いかければ、あれやこれやとやることはたくさん出てくる。途中で出来たつまみを信長たちの所へと届ける役を請け負って月子が盆を持って部屋に行くと、杯を持っている元就と晴久が居てきょとんとする。
酒の匂いが充満するその部屋で、手にした盃を満たすのは酒にしか見えない。
「兄さんも晴久さんも、お酒を飲んでるんですか?」
「飲んでねぇよ。杯渡されたけど中身はソレだ」
「炭酸?」
「さすがに教員のいる家で酒は、な」
「びっくりした」
お酒を飲んでいるのかと目を瞬かせた月子に、笑いながら否定した晴久と物足りなさそうな元就の様子にホッとした様に表情を緩める。
付き合い上、飲むことがないとは言わないのだろうがまさかと思った月子である。中身を聞いて納得した後、ならこの酒気が濃い部屋は信長が一人で飲んでいる酒のせいかとそれはそれで驚きつつつまみを置いていく。
部屋を出て再び台所を手伝っていると時間はあっという間に過ぎていた。気が付けば間もなく全員が集まる時間になるという頃合いになっていた。