第3章 砂漠の月151~172【完】
162
月子と市が参加を申し込んだフリーマーケットの日が来て、朝から二人はバタバタとそれぞれの場所で準備をしていた。
作った物は市の実家である織田の部屋に収められており、当日は黒羽と雹牙も車を出し搬入を手伝ってくれていた。
「値札よし、品物よし、領収書よし、簡易のフィッティングルームよし!」
「間に合いましたね」
「うん、良かった。雹牙も黒羽も元就も晴久もありがとうね」
「ありがとうございます」
二人が頭を下げると、無言で四人から頭を撫でられ首を竦める。周囲からは美形ぞろいの市たちのスペースはかなり注目を集めており、開店を今か今かと待ちかまえられている。
時刻はフリーマーケット開始から三十分経過していた。
「そろそろ売りださねぇと、列が凄いことになるぞ?」
「え?」
「わっ?!」
並べた服の向こう側で、価格を入れたチェック表などを確認していた市と月子は晴久に声を掛けられてひょいっと服の向こうから通路を見ると、店先に既に並べられた服を遠目に物色している客が何人も立っていた。
市と月子は目を見開くと、慌てて接客の為に外に出ていく。
「すみません! お待たせしました」
「いらっしゃいませ、どうぞ」
二人でそう声を掛けると、既に買いたい物を決めていたのか待っていた客が次々とあれをこれをと告げてくる。
そこからは戦争のような状態で晴久と元就も借り出して応対することになり、昼を過ぎるまでひっきりなしに人が訪れていた。
半数は前回のフリーマーケットで来てくれたが買えなかったという人で、ブログとSNSの呟きで知って今日を待っていたと声を掛けてくれる人も居た。
今回は種類もだが、サイズもいくつか揃えていたので買いに来た人もサイズを選んで手直しが不要という場合が多く、接客もスムーズに進んだ。
小物の方は種類より色や柄のバリエーションを増やしていたので、若い人だけでなく年配の人もかなり購入して貰えたようだった。
出店を決めてから数か月しかなかったが、時間のほとんどをこの為に動いていたので品数は前回と同程度揃えていた。にもかかわらず、昼を過ぎておやつ時がくる前には完売となった。