第3章 砂漠の月151~172【完】
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浅倉の大学祭を見に行った市たちは、自分でもフリーマーケットに参加してみたいという気分になり、過去に作ってお蔵入りしていた服や小物を出してきて少々手直しして一か月後に近所であるフリーマーケットに滑り込み参加となった。
「お姉さん、このポーチって……」
「は、はい! ええっと、これは色違いもあって、これと、これが……」
「お嬢ちゃん、この洋服ってサイズ直しできるのかな?」
「はい、そちらの女の子に合わせれば?」
「ああ、頼むよ」
月子が女子高生らしき女の子の声掛けで、小物として置いてあるポーチについて尋ねられている時に年配の男性が市へと問いかけていた。
おいでと市が笑顔で声を掛けると、依頼してきた男性の横に居た少女が頬を染めて恥ずかしそうにしながらも市の傍に来る。
簡易の試着場所として用意した目隠しになる場所で女の子に着替えて貰って、裾上げとウエストを簡単に詰めると市はもう良いよと女の子を促してまた男性の元へと戻った。
結論から言えば、初めて参加にもかかわらずその完成度の高さから、購入した物を呟きとしてネットで写真つきで流された結果大盛況となっていた。
昼前なのに持ってきた在庫はあらかた捌けようかという状態で、作り主である市と月子は右に左にてんてこ舞いである。
その二人の彼氏である晴久と元就は、会計や在庫の移動などの細かい裏方を請け負って地味に働いていた。
「完売です! すみません、もうお渡しできる商品がなくなりました!」
正午になり、最後の一つだった市が作ったが売れたことで販売できる商品がなくなり、まだ並んでいた客たちへ四人で頭を下げると残念そうな表情をされた。
ホームページはないのか、依頼は出来るのか、などなど多数聞かれたが市たちとしてはフリーマーケットを体験してみたいと思っただけのことでそのような準備はしていないため平謝りである。
場が落ち着くのに三十分は要しただろうか。漸く客が引くと市と月子はその場で崩れるように座り込んだ。
「つ、つかれた……」
「何故か予想以上に売れました、ね」
大学祭で見た出店を思い出して参考にした道具の持ち込みで、市たちのスペースには衣装を掛けるためのハンガーラックには衣装がなくなったハンガーが大量にかかっている。