第3章 砂漠の月151~172【完】
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宣言通り、岩崎を足に浅倉の母校の学祭に来た四人は正門で待っていた浅倉を見てそちらへと寄って行く。
「いらっしゃい! ごめんね、お迎えに行けなくて」
「本当に」
「元就っ! もう……。気にしないで、浅倉さん。招待してくれてありがとう。市、浅倉さんは来れないのかと思ってた」
「いやぁ、休みは取ったんだけどOBとして顔出してるから後輩たちと顔見知りで、今回どうしてもって頼まれて手伝いに入ったからちょっとね」
「それっていいの?」
「うん、まぁ、材料の搬入とかそういう関係だから。で、完成が気になって今日も朝一から来ちゃったんだよね」
「なるほど……」
伝手を使って材料や道具を借りたり買ったりそういうのは確かにありかもと唸っている市の横で、月子は興味津々といった様子で晴久の腕に掴まりつつきょろきょろとしている。
小さい子の様な様子にクスリと笑った晴久に小突かれて、おでこを抑えると顔を赤くして照れ笑いしている姿をチラチラと通りすがりの男たちに見られていたりする。
市の方も元就や浅倉と話し込んでいる横顔に惹かれる者が多く、やはりチラチラと視線を投げられているが元就の腕が腰に回されているのも見て肩を落として去っていく。
そんな様子を引き攣った顔で見ているのは車を出した岩崎でこのまま帰れると思ったら、当然ながら一緒に来るようにと浅倉にお達しを貰って一緒にいるのである。
あれほど写真を撮らせろと執着していた割に、注目されるこの集団に混じるのは居心地が悪いらしいが誰も気にしてはいない。
元気な浅倉の案内で、四人と岩崎は祭りが始まった学園内へと案内される。
「わぁ……なんか、凄いですね。キャンパスなのに、出店とか出てる」
「そうだな。結構盛大だな」
「出店も生徒がやってるんだよ。あとは、大学が一般から募集して出店するとこもいくつか。これは資金集め用にね」
「へぇ……」
どこへ回るか、パンフレットを見せられて相談していくつか回りながら、途中の出店で買い食いをしたり射的などの典型的な祭りのゲームからドローンを使ったゲームまで様々に見て回る。
社会人とさほど変わらない大学生たちが、あれこれ趣向を凝らしている店はどこもかしこも面白く、特に市と月子がハマったのはジェルを固めて作るアクセサリーを体験できるという店舗だった。