第3章 砂漠の月151~172【完】
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「市ちゃん、元就君、晴久君、月子ちゃん!いたいた」
「浅倉さん?」
学校の帰り道、背後から車が近づいてきたなと思ったら見慣れた車で。窓からひょっこりと顔を出した馴染みの笑顔。
たまたま見かけたから来たのかなと思ったら、何か白い封筒を4人分渡される。中を取り出すとチケットのような紙が1枚。
「僕の母校で学祭やるんだよ~、良かったら一緒に遊びに行かない?」
「行く」
「市ちゃん即答!あ、岩崎を足にさせるから?」
岩崎。
先日写真を撮りたいという理由でストーカー紛いの事して魔人浅倉に説教されてた見習い記者さん。
あれ以来顔は見せなかったので浅倉さんにコキ使われてるんだと予想してたけど。
浅倉さんに聞いてみると良い顔で、ああ、暫く下僕だったよと。浅倉さん最強ですねー
「ふん、大学か」
「うん、君達ももう受験なんだから、気分転換になればいいなって、あ、これ私服で参加可能だよ」
「浅倉さん、ありがとう」
「じゃあ僕はこれで」
チケット渡す為に来てたんですか。相変わらず優しい人だなと笑って。私服で来て良いところだって事は着物でもいいのかな?
楽しみだねえ、思えば婆娑羅校系列以外での学校イベントは初めてですね。
「今度の土日か、金曜日の勉強時間倍にしよう…」
分かれ道で晴久と月子ちゃんと分かれて、自宅に戻る道で元就は市の喜び様に少しだけ口角を上げた。
「元就は大学どうするの?」
「婆娑羅大ぞ、法学部か医学部か決めかねている」
「頭の良い学科かぁ、将来は弁護士かお医者さん?」
「否、毛利の家を継ぐ。暫くは父の事業展開の手伝いだな」
「そこは興元さまじゃないのね」
「何故か押し付けられていてな…」
私は服飾デザイナーでも出来たらいいな、夢はブランドを出す事でしょうか。
でも結婚したら元就の事業手伝いになるから。
独立か?服作って結婚生活を充実させたいなあ。子供…は、何人作るのでしょうか…
思考がどんどんずれていって、顔を赤くして俯くと。じっと、元就に見つめられたと思ったら優しく背中を撫でられて顔を上げる。