第3章 砂漠の月151~172【完】
ずいっとパンフレットを差し出され、確認した中身は婆娑羅学園の大学部にある服飾科の資料だった。和裁から洋裁まで、一年で基礎をやり、その後学年が上がると専門的に行きたい方向の教授につくというもの。
それを見て目を輝かせた月子に雹牙が内心で、市を追いかける形になるんだろうなと眺めているのには気付かなかった。
進路相談も終わり、晴久にLINEを送った月子は帰宅準備をして武道場へ顔を出す。丁度終わったところの晴久が笑顔で手を上げてくれるのに笑顔で手を振り返し、少し待っていると着替えた本人に声を掛けられる。
「進路相談だったんだろ?」
「うん」
「どうだったんだ?」
「うーん、あのね、服作ったりするの楽しいって知ったからそういうのやりたいんだ」
「ああ、じゃあ市と一緒の方に進むのか」
「え? そうなの?」
手を繋いで歩き出しながら尋ねられ、素直に返せば思いもよらない返答が来てきょとんと首を傾げる。
その様子に微笑みながらそうだと頷いた晴久は、もう少し先の話だから入りたい大学も含めて良く考えると良いと答えてクンッと繋いだ手を引っ張る。
驚いて引き寄せられた月子が顔を上げると、額に唇が降りてきて思わず首を竦めて真っ赤になると頬を膨らませた。
いちゃつく二人を誰かが見咎めることもなく誘われるまま自宅に連絡を入れた月子は、晴久の家に夕飯を作りに行くいつもの帰り道になった。