第3章 砂漠の月151~172【完】
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緊張し、震える月子ちゃんの手を引けば、安心するのかほにゃっと表情が柔らかくなる。今日は2人で外に買い物に行き、ついでに着いて来る例の人物を捕獲しようと計画を立てています。
黒羽は影護衛で身を隠し、雹牙も何かあったらすぐ動ける様に外と連絡を取れる様に手配をしていた。
いつも通りに買い物をし、月子ちゃんと並んで歩いてれば。感じる視線にチラリと視線を移す。いつもの視線、場所はまだ、人混みに紛れているのでハッキリと特定できない。
着いてくるかな、と家の方向に歩けばしっかりと私達の靴音に混じって足音が聞こえる。
「月子ちゃん大丈夫?」
「市先輩が居るんで、大丈夫です」
きゅっと、強く握られた手に思わずふんわりと笑った瞬間、何かの機械音が聞こえた。写真?まさか。「ぎゃっ」と蛙の潰れる様な声で黒羽が動いたのだと分かった。
声のした方へ駆けると、黒羽に取り押さえられてたのはカメラを片手に、涙目で潰れてる男。
ええと、長い髪を後ろで括っていて、うん、昨日月子ちゃんが言ってた髪型と一致。
「いたたたた!ご、ごめんなさいい!!」
「どこの誰だか知りませんが、盗撮は良くありませんよ」
「すみませっ、ずっと、ずっと探してた方だったんで思わずです」
「「はいー?」」
私達を探してたって、一体この方は何者だろうね?月子ちゃんと顔を合わせて首を傾げた。
とりあえず、悪質なストーカーじゃなくて良かった?
市と元就の家で、男からぶんどった免許証と名刺、バッグに入ってた写真数枚を見て深く溜め息を吐く。
「これ…」
紅葉狩りの時に浅倉さんに撮ってもらったやつだよね。着物でWデートした時の。
何でこんなの持ってるんですか?と黒羽が笑顔で締め上げれば、これは浅倉の持ってた写真のコピーだと。
「俺も、君達を撮りたいと思ったんだ!だけど浅倉は君達の事を一言も話さなくて」
「そりゃ、そうでしょう。市達一般の高校生」
「え!?高校生?」
「老けて見えてごめんなさいね?」