第3章 砂漠の月151~172【完】
晴久に膝抱っこをされながら問われ、恐々とその時の事を思い出していた月子は手掛かりになりそうなことはないかと目を閉じる。
直ぐ近くに来ていたわけではなかったために香りも音も、僅か手掛かりになりそうなものは思い浮かばない。
しゅんとした様子で目を開けて、これ以上はと首を横に振ると仕方ないと頭を撫でられてこっくりと頷く。
ちなみに、今は話し合いが終わって晴久の家に連れてこられたところである。肩口に頭を預け、撫でられる心地よさに目を閉じれば心の底にあった恐怖も徐々に消えていく。
「ごめんなさい」
「お前が謝るこたねぇよ。ただ、まぁ……無事で良かったよ」
ぎゅっと抱きしめられてこっくりと頷くと、月子からも腕を回して抱き着く。
話し合いでは結局月子の方の犯人が手掛かりがなく、市の方と同一人物なのかなどの判断がつかないため明日から様子見ということで解散になった。
市のストーカーと同一人物かどうかで目的も変わってくるだろうという話だ。
「明日からは極力一緒に居るから」
「うん、私も気を付ける」
「そうしてくれ」
顔を上げて言えばちゅっと軽いリップ音と共に頬に口づけられ、くすぐったくて首を竦めるとそのまま布団に倒れ込まれて小さく悲鳴を上げる。
抱きすくめられて今日はこのまま寝るぞと言われればそれ以上は抗えず、妙な緊張ですり減った神経は直ぐに眠りへと誘われ月子は安心できる晴久の腕の中でゆっくりと眠りに落ちた。