第2章 しあわせなゆめのはなし
「じゃあ俺行くな。お前も気を付けて帰れよ」
「うん!ばいばい!」
駅前の時計で時間を確認すると、そろそろ電車が来る時間だった。
「あのさ・・・お前」
「なあに?」
・・・多分、こんなこと言わない方がいいんだと思う。せっかく親切にしてくれたこいつに。
だけど、一緒に歩いている間ずっと、隣でぴょこぴょこ揺れてて気になって仕方なかった。
「・・・ガキっぽく見られたくなかったら、こういうのやめた方がいいんじゃねえの?・・・・・・いちご」
そいつの髪に結んであるゴムについてるいちごの飾りを、俺はつんとつついてやった。
その瞬間、そいつの顔がまるで本当のいちごみたいにまっ赤になっていった。
「そんじゃな!」
そいつが怒って何か言う前に、俺は走って改札を抜けた。そしてやって来た電車に飛び乗った。
・・・あいつの名前、聞いておけばよかったかな。
電車に揺られながらふと思った。
・・・まあでも、いつかバッタ見せてやるって約束したしな。
それに・・・・・・いちごでいいか。あいつ、ちっこかったし。真っ赤になった顔もいちごみたいだったし。
最後に見たあいつの真っ赤な顔を思い出して、俺は少しだけ笑った。